令和8年度を迎えるに当たり、私の町政運営に対する基本的な考え方と、令和8年度の主な施策の概要を申し上げ、議員各位並びに町民の皆様の御理解と御協力を賜りたいと存じます。
令和8年は、熊本地震発災から10年となる節目の年となります。犠牲となられた方々に哀悼の意を表するとともに、災害の教訓を活かした防災対策の必要性を深く認識し、安全・安心なまちづくりに向けた取組を進める決意を新たにしたところです。
それでは、令和8年度における町政運営について申し上げます。
本町を取り巻く社会経済環境が大きく変化する中、本町に建設中のJASM第2工場において、国内初となる回路(かいろ)線(せん)幅(はば)3ナノの先端半導体を生産する計画が進められることは、大変喜ばしいことであり、実現されれば、我が国全体の産業基盤の強化に繋がるもので、極めて大きな意義を持つものであります。
町としては、熊本県と連携して、第2工場建設が円滑に進むよう支援して参ります。
そして、本プロジェクトの効果を実感していただけるよう、産業振興と雇用の創出、更には生活環境や都市基盤の充実を図り、全ての町民の皆様が将来にわたり、安心して暮らせるまちづくりを進めて参ります。
本町の令和8年度の当初予算は、地方交付税の不交付団体となったことを「自立した自治体」と捉えまして、責任ある財政運営を、より一層徹底する方針のもと、財政規律を維持しながらも、将来に必要なまちづくり事業や、町民の皆さんに住んで良かったと思っていただける事業を、戦略的に進めることを意識し、編成を進めて参りました。
その中で、重点施策として、「町民の生活を豊かにする施策」、「企業進出に対応した施策」、「新しいまちづくりに向けた施策」、「町民サービスの向上のための施策」を位置付けました。
それでは、令和8年度の主な施策と主要事業について、御説明いたします。
最初は、健康・子育て・福祉についてであります。
健康づくりについては、新たに「働き盛り世代のがん予防推進事業」に取り組みます。働き盛り世代は、仕事だけではなく、結婚、子育て、介護など様々な役割を担うことが多く、心身ともに健康を維持することが重要な世代です。この世代のがん検診受診率向上を図るため、40歳から70歳までの5歳毎の節目年齢を対象とした無料検診を行います。胃がんや大腸がん等の6種類のがん検診を無料で行う、この事業は、町民の皆様の大切な健康をお守りしたいという私の強い思いを込めた、全国でも先進的な取組です。
また、幼児期の子どもや、その保護者が抱える個々の発達や子育てに関する悩みを解消し、安心して就学に臨めるよう、早期に必要な支援に繋げることを目的とした「5歳児健診」の実施や、新たに予防接種法に基づく定期接種となる、妊婦を対象としたRSワクチン接種にも取り組んで参ります。
次に、子育て世代の経済的支援として、高校3年生までの子ども医療費の助成や、学校給食費、保育所などの副食費の無償化を、引き続き実施します。
また、子育て支援の充実のため、現在、ふれあい交流福祉支援センターで実施している、「病後児保育所こあら」において、利用ニーズの高い「病児保育」を併せて実施します。
さらに、「武蔵ヶ丘児童館」を「こども館」としてリニューアルし、5月から運営を開始します。様々な活動プログラムの企画や、育児等に関する相談体制の強化を図り、乳幼児親子から小学生までの多くの方へ、施設を利用していただけるよう取り組んで参ります。
保育施設の整備では、菊陽南小学校区の放課後児童クラブ施設の建設や、町立保育所なかよし園の建替えに係る設計業務も進めて参ります。
次に、「高齢者支援」です。
高齢者支援については、町の重点施策の一つとして位置付け、その充実に取り組んでおります。
まず、介護人材の不足解消に向け、新たに「介護人材等定着支援金交付事業」を開始します。現場の声をもとに練り上げた本事業では、入職から7年間にわたり、一人当たり最大で160万円の支援金を交付します。この事業も、全国でも先進的な試み(こころみ)です。
また、ケアマネジャーの負担を軽減するため、業務範囲を明示した啓発パンフレットを作成し、介護支援専門員が本来の業務に注力できる環境を整えます。
特に力を注ぐのは、「介護保険住宅改修助成事業」の大幅な拡充です。現在の助成額20万円に、新たに町独自で20万円を上乗せし、さらに、対象外だった工事も、広く助成対象に含めることで、住み慣れた自宅での自立した生活を後押しします。
併せて、身寄りのない高齢者の不安に寄り添う「終活情報等登録制度」の開始や、行政手続の支援を行う「あんしん支援サポート事業」の試験実施など、個別ケアを意識したきめ細かな支援を展開して参ります。
これまで申し上げてきました、子どもから高齢者まで、全ての世代に対する施策を、他の自治体に先駆けて取り組むことで、全ての町民の皆様が「この町に住んで良かった」。そう心から実感していただける町となるよう、強い気持ちを持って積極的に進めて参ります。
次に、教育・生涯学習・スポーツについてであります。
中学生の国際交流の取組については、これまで実施してきたオーストラリアへの中学生派遣事業が諸事情により中止となりましたが、令和8年度からは中学生が「国際交流」から一歩進んだ「多文化共生」をテーマに、実践的に学習できる機会として、大分県の「立命館アジア太平洋大学」への派遣事業を実施します。
教育環境の整備については、武蔵ヶ丘北小学校では、管理特別教室棟の大規模・長寿命化改修工事、菊陽北小学校では、増加する教職員への対応として職員室の改修工事、武蔵ヶ丘中学校では、隣接する武蔵ヶ丘コミュニティセンターの大規模改修工事と併せて、武道場の空調設備工事及び大規模・長寿命化改修工事を実施します。
菊陽杉並木公園拡張整備事業については、アーバンスポーツ施設や多目的グラウンドの整備が3月末には竣工し、4月11日にグランドオープン致します。アーバンスポーツについては、熊本県とアーバンスポーツを通じた交流人口拡大や競技レベルの向上を目的に連携協定を締結しており、県が進めるスポーツツーリズムとも連携し、4月18日にはスケートボードのプロツアー開幕戦が開催されます。
また、総合体育館を含む杉並木公園周辺を、総合運動公園と位置付けるとともに、民間ノウハウを活用し、更なる施設の利活用に繋げるため、アーバンスポーツ施設の開業に合わせ、指定管理者により公園全体を一体的に管理・運営を行って参ります。
県営野球場については、令和8年度の県の移転先候補地の決定に向け、専門的な知見を持つ事業者の支援も受けながら、本町だからこそできる魅力ある提案書の作成を行い、本町への野球場の誘致が実現できるよう全力で取り組んで参ります。
次に、「自然・環境保全」についてであります。
先人の知恵とたゆまぬ努力により育まれた熊本地域の地下水は、我々が守り抜くべきかけがえのない宝です。この貴重な水資源を、次世代へ確実に引き継ぐことを使命とし、保全と将来に向けた有効活用に尽力して参ります。
地下水涵養に向けた取組としては、おおきく土地改良区、水循環型営農推進協議会と連携し、冬期湛水を加えた水田湛水事業を継続するとともに、菊池地域の関係団体で構成する白川中流域等水稲作付推進協議会においては、企業と地元農業者とを結び付け、水稲作付けの維持・拡大に取り組んで参ります。
また、営農による涵養機能の維持に加え、営農によらない新たな涵養対策として、新町井手沿いにおいて、防災機能と併せて地下水涵養機能を有するグリーンインフラとして調整池の整備に取り組んで参ります。
他にも地下水保全への取組を伝える普及・啓発の一環として昨年整備した「雨庭」を活かし、さらなる地下水の保全に努めて参ります。
次に、土地利用・都市基盤についてであります。
土地利用については、令和7年3月に見直しを行った「菊陽町都市計画マスタープラン」に基づき、バランスの取れた効果的な土地利用の実現に向けた取組を進めます。
具体的には、都市計画マスタープランに示す「将来都市構想」に基づき、「守るべき農地」は引き続きしっかりと守り、その上で国家戦略である半導体産業の集積に向けた新たな工業団地の整備や、「町の均衡ある発展」の実現に向けた、南小学校区における新たな市街地ゾーンの整備、更には久保田台地の開発構想を実現させるため、まずは必要となる新設道路整備の取組を進めます。
効果的な土地利用の実現には、将来を見据えたコンパクトな都市づくりと、公共交通の充実が不可欠です。この取組を具体的に位置付けるため、本年9月を目途に「立地適正化計画」を策定します。この計画では、令和11年春以降の開業を目指すJR新駅を、公共交通の拠点として位置付けるとともに、駅周辺での取組を進める新たなまちづくりと一体的に整備を進めます。
また、(仮称)原水駅周辺土地区画整理事業については、令和8年度中の事業認可取得を目標としています。50年後、 100年後を見据えたまちづくりの実現は、長期にわたってエリア全体の価値を向上する仕組みが必要です。
このため、これまでも説明を差し上げてきた「デザインガイドライン」の策定や、「ミュージアム構想」の具体化に全力で取り組んで参ります。
町を取り巻く環境が大きく変化している今だからこそ、町の将来の姿をしっかりと見定め、その実現に向けた施策を着実に進めて参ります。
町の最重要課題のひとつである交通渋滞対策については、引き続き、国をはじめ、県及び近隣自治体と連携し、緩和に向けた取組を積極的に進めて参ります。
特に、菊陽空港線延伸道路事業については、令和8年度末の完成に向けて、県と連携して事業を着実に進めて参ります。
また、セミコンテクノパーク周辺道路の整備についても、「地域産業構造転換インフラ整備推進交付金」を活用し、交通渋滞対策に最大限の力を注ぎ、異次元のスピードで積極的に取り組んで参ります。
さらに、将来の道路ネットワーク整備を見据えた計画として、南方大人足線延伸道路事業や、古閑原西護(にしもり)川(かわ)線(せん)改良事業に引き続き取り組んで参ります。
その他に、生活道路の整備として、狭あい踏切の整備促進を図り、交通安全確保のため、新町踏切の拡幅に着手します。
下水道事業につきましては、「ストックマネジメント計画」に基づき、継続的な調査・点検を実施し、管路やポンプ施設の機械設備の計画的な改築・更新を行います。また、激甚化する集中豪雨から、町民の皆様の生命と財産を守るため、新たに「雨水管理総合計画」の策定に着手し、中長期的な視点に立った段階的な雨水整備を、着実に進めて参ります。
半導体産業の集積に伴う排水対策として、熊本県が主体となって取り組む「熊本セミコン特定公共下水道事業」につきましては、引き続き県と緊密に連携・協力し、本町の強固な経営基盤を支える重要インフラとして、着実な進捗を図って参ります。
次に、産業の振興についてであります。
まず、農業の振興については、守るべき農地はしっかりと守り、農地の集積・集約化を推進し、農業者の経営の向上・安定化の実現と農業後継者や新規就農者など、次世代を担う農業者の育成・確保を図って参ります。
その中で、本町の農業振興のため、規模拡大を図る農業者やスマート農業などに積極的に取り組む農業者への支援を強化・拡充するとともに、新たに営農継続に向けた支援、そして、新規就農を目指す方や、新規就農された農業者が継続して営農できる環境など、その仕組みの構築に取り組んで参ります。
また、地域の共同活動により、農業・農村が持つ国土保全や水源涵養などの、多面的機能は維持・発揮されておりますが、これまで以上に、地域の実情や課題に的確に対応できるよう、国の制度を基本としつつも、町単独事業による支援を講じることで、活動組織の負担軽減や継続的な活動の確保を図り、多面的機能の一層の発揮につなげて参ります。
さらに、規格外にんじんを利活用し、農業所得の向上及び「菊陽にんじん」の販売を促進するため、JA熊本果実連、JA菊池と連携して開発した「にんじんジュース」の販促活動を強化するとともに、食育についても推進して参ります。
工業の振興につきましては、現在、JASM第2工場の建設が進められておりますが、第1工場と同様に、JASM、TSMC、国、熊本県をはじめとする関係機関と緊密な意思疎通を図りながら、全庁を挙げて支援して参ります。
また、JASM第1工場南側において進めております(仮称)第三原水工業団地整備事業につきましては、4月以降、土地開発公社において、順次用地買収に着手して参ります。
商業の振興については、町内の経済活動が活発化するよう、引き続き、商工会と緊密な連携を図り、中小企業や小規模事業者への支援と併せ、町内の仕事は町内の事業者へ発注するなど、町内経済が循環する産業の地産地消に向けた取組を強化して参ります。
また、歴史的文化財である「馬場楠井手の鼻ぐり」、豊後街道菊陽杉並木のほか、鼻ぐり井手公園、菊陽杉並木公園、さんふれあなどの従来の観光資源だけでなく、海外からの移住者にも、本町を楽しんでいただけるようなスポットなどについて、熊本県や関係市町とも連携しながら、情報発信に取り組んで参ります。
次に、防災・消防・防犯についてであります。
防災対策については、町民の防災意識の向上を図るため、防災フェスタの開催や防災教育の実施に取り組み、災害に強いまちづくりを推進して参ります。
また、2か年計画で実施しております、一時避難所となる地区公民館への災害用ポータブル蓄電池の配置や、計画的に進めております指定避難所への防災倉庫の設置事業を引き続き実施して参ります。
消防関係については、消防団員確保が大きな課題となる中、機能別消防団員制度を導入し、災害対応能力の向上、消防団員の負担軽減を図って参ります。
防犯対策については、防犯講話などを通じて、町民への治安情報の発信に努めるほか、大津地区防犯協会連合会が実施する防犯カメラ設置事業への助成を継続して参ります。
その他、犯罪被害者等を総合的に支援するため、犯罪被害者等支援条例を制定し、町民が安心して暮らすことのできる地域社会の実現を目指して参ります。
次に、人権・多文化共生の推進についてです。
人権については、「菊陽町人権教育・啓発基本計画」に基づき、部落差別をはじめ、あらゆる人権問題の解決を目指し、町民、学校、地域及び関係団体等と連携しながら、人権教育・啓発の推進に努めて参ります。
また、「第3期菊陽町男女共同参画計画」に基づき、子育て・教育・家庭・地域、職場や高齢者福祉など、あらゆる分野における男女共同参画の推進に取り組んで参ります。
多文化共生については、既存の外国人相談窓口の機能を強化し、外国人の支援を行う、「多文化共生センター」を新たに設置し、多文化共生に関する取組や情報を集約するとともに、外国人住民の方への情報提供や相談体制などを、更に強化して参ります。
次に、行財政の充実・強化についてであります。
財政については、将来にわたり持続可能な財政運営を確保するため、国や県の交付金を確実に確保するとともに、増加する税収を計画的・効果的に活用し、後年度負担を見据えながら、必要な事業を着実に進めて参ります。併せて、業務の効率化を一層推進して参ります。
自治体DXの推進については、国が示す自治体DX推進計画及び「菊陽町デジタルファースト推進計画」に基づき、引き続き取り組んで参ります。
これまでに導入したオンライン申請やキャッシュレス決済、マイナンバーカードなどの活用を更に進め、役場に行かなくても行政手続を進められる「行かない役場」の実現に向けた取組を進めるとともに、AIを活用した業務改善に取り組んで参ります。
以上、令和8年度における私の町政に臨む所信の一端と、主な施策の概要について御説明申し上げました。
今後も、町のスローガンである「成長しつづける町。」として、更なる発展と日本一のまちづくりを目指し、令和7年度に新たに策定した「第7期菊陽町総合計画」の実現に向け、「基本構想」に示した施策を着実に進めるために、町民の皆様とともに、様々な事業に取り組んで参りますので、議員各位のより一層の御理解と御支援・御協力を賜りますようお願い申し上げまして、私の令和8年度の施政方針といたします。